はじめに
暗号資産(仮想通貨)は、デジタルな世界で利用できる新しい形のお金です。しかし、その種類は非常に多く、初心者の方にとってはどれを選べば良いのか、どのように違うのかなど、分からないことが多いかもしれません。本記事では、暗号資産の種類、主要なコイン、ステーブルコイン、現物資産に裏付けられた暗号資産、そしてトークン規格について、初心者の方でも理解できるように分かりやすく解説します。
暗号資産の種類:代表的な分類とそれぞれの特徴
暗号資産はその特性や活用用途に応じて、いくつかのカテゴリに分けられます。以下に分類ごとの特徴と代表例を詳しく紹介します。
ビットコイン(BTC)
- 世界で最初に誕生した暗号資産で、通貨としての役割を超え、デジタルゴールドとも呼ばれています。
- 中央管理者のいない分散型ネットワークを用い、取引の透明性と耐改ざん性を実現。
- 発行枚数に2,100万BTCという上限があり、希少価値とデフレ設計が特徴です。
アルトコイン(ビットコイン以外の暗号資産)
- ビットコインの限界を補完したり、独自機能を持つ暗号資産です。
- 用途は決済、スマートコントラクト、クロスボーダー送金、プライバシー強化など多岐に渡ります。
- 代表的なアルトコイン例:
- イーサリアム(ETH): スマートコントラクトとdAppsプラットフォームの先駆け。
- リップル(XRP): 国際送金に特化した高速決済プラットフォーム。
- ライトコイン(LTC): 送金速度が速く「銀」と称される通貨。
- カルダノ(ADA): 高度なスマートコントラクト機能を持ち、環境負荷の低いPoS採用。
- ポルカドット(DOT)、ソラナ(SOL)、アバランチ(AVAX)、チェーンリンク(LINK)、ステラルーメン(XLM)、モネロ(XMR)など、多彩な技術的目的に応じた通貨が続々登場しています。
ステーブルコイン
- 米ドルやユーロなどの法定通貨や金などの資産に連動し、価格安定を重視。
- 暗号資産市場での決済手段や資産避難先として利用。
- 代表例:
- USDT(テザー)、USDC(USDコイン)、BUSD(バイナンスUSD)、DAI(ダイ)
- その他:テラUSD(UST)、トラストUSD(TUSD)、パクソスドル(PAX)、ジェミナイドル(GUSD)、ユーロコイン(EUROC)、リブラ(LIBRA)
ミームコイン
- インターネットジョークやコミュニティ文化から派生したユニークな暗号資産。
- 投機目的で人気が高く、価格変動が激しい。
- 主な例:
- ドージコイン(DOGE)、柴犬コイン(SHIB)、ベビードージコイン(BABYDOGE)
- 他に、モナコイン(MONA)、フロキ(FLOKI)、ペペ(PEPE)、ドージファザー(DOGEFATHER)、スヌーピーコイン(SNOOPY)、エルビスコイン(ELVIS)など。
DeFiトークン
- 分散型金融(DeFi)サービスで利用され、ガバナンス投票や報酬分配に使われます。
- プロジェクトの成長と共に価値が増すものも多く、長期投資対象として注目。
- 代表例:
- ユニスワップ(UNI)、エイAVE(AAVE)、メーカー(MKR)、コンパウンド(COMP)、カーブ(CRV)、Yearn.finance(YFI)、パンケーキスワップ(CAKE)、1inch Network(1INCH) など。
現物資産裏付け型暗号資産
- 金や不動産、株式、美術品などの現物資産と価値を連動。
- ブロックチェーン上で資産をトークン化することで流動性を高め、少額取引も可能に。
- 代表例:
- パクソス ゴールド(PAXG)、テザー ゴールド(XAUT)、DigixDAO(DGD)、ペトロ(PTR)、Perth Mint Gold Token(PMGT)
- その他、トークン化不動産、トークン化株式、債券、美術品、カーボンクレジットなど、多様な現実資産がブロックチェーン上で取引可能となっています。
このように、暗号資産は用途ごとに明確な特徴を持ち、今後も新たなカテゴリーが登場することが期待されています。投資や利用を考える際には、それぞれの特性とリスクを十分に理解することが重要です。
AI関連の暗号資産
近年、AI技術の発展に伴い、AIに関連した暗号資産も登場しています。これらのコインは、AI技術を活用したプラットフォームやサービスで利用されることを目的としています。
- SingularityNET(AGI):
- 分散型AIマーケットプレイスを提供し、AI開発者と利用者を繋ぎます。
- Fetch.ai(FET):
- AIエージェントが自律的に経済活動を行うプラットフォームを構築します。
- Ocean Protocol(OCEAN):
- データ共有と収益化のためのプラットフォームを提供します。
- The Graph(GRT):
- ブロックチェーンデータのインデックス作成と検索を効率化します。
- Numeraire (NMR):
- AIと機械学習を活用したヘッジファンドプラットフォーム。
これらのAI関連コインは、AI技術の発展とともに、今後さらに注目を集める可能性があります。
主要な暗号資産:ビットコイン、イーサリアムなど
ビットコイン(BTC):
-
- 時価総額が最も大きい暗号資産です。
- 決済手段や価値の保存手段として利用されます。
イーサリアム(ETH):
-
- スマートコントラクトという契約の自動化技術を搭載しています。
- DeFiやNFTなどの分野で広く利用されています。
リップル(XRP):
-
- 国際送金システムを効率化するために開発されました。
- 金融機関での利用を目指しています。
ステーブルコインとは?:USDTの種類と注意点
ステーブルコインは、価格の安定性を保つために、法定通貨や他の資産と連動しています。しかし、その連動方法や発行元によって、いくつかの種類があります。
- USDT(テザー):
- 最も利用されているステーブルコインの一つです。
- 米ドルと1:1で連動することを目指しています。
- しかし、過去には準備資産の透明性について議論がありました。
- USDTは、様々なブロックチェーン上で発行されており、それぞれ規格が異なります。例としてイーサリアムチェーン上のERC-20規格、トロンチェーン上のTRC-20規格、などがあげられます。
- 送金する際は、送金元と送金先の規格を合わせる必要があります。
- USDC(USDコイン):
- 米ドルと1:1で連動し、透明性の高い準備資産によって支えられています。
- 規制遵守を重視しており、信頼性が高いとされています。
現物資産に裏付けられた暗号資産:金、不動産など
現物資産に裏付けられた暗号資産は、現実世界の資産と連動することで、暗号資産の価値に安定性をもたらします。
- 金(ゴールド)裏付け型:
- 金の保有量に応じて発行される暗号資産です。
- 金の価格変動に連動するため、価値の保存手段として利用されます。
- 不動産裏付け型:
- 不動産の所有権をトークン化し、分割して取引できる暗号資産です。
- 不動産投資の流動性を高める効果があります。
トークン規格:ERC-20、BRC-20とは?
トークン規格とは、ブロックチェーン上で独自のトークンを発行・管理し、安全かつ一貫性のある取引を行うために策定された共通ルールです。これにより、異なる開発者やプロジェクトでも互換性を持ってトークンを利用できる仕組みが整います。
ERC-20とは?
- プラットフォーム: イーサリアムブロックチェーン
- 特徴:
- 最も普及しているスマートコントラクトベースのトークン規格。
- 「送信(transfer)」「残高確認(balanceOf)」「承認(approve)」など標準化された関数を持ち、ウォレットや取引所でも容易に対応可能。
- 多くのICO(Initial Coin Offering)で利用され、新しいアルトコインやユーティリティトークンの発行基盤として活用されています。
- 代表的なERC-20トークン例: USDT(テザー)、LINK(チェーンリンク)、UNI(ユニスワップ)、MKR(メーカーDAO)、BAT(ベーシックアテンショントークン)など。
- 応用: ステーブルコイン、ガバナンストークン、NFT決済手段、DeFiプラットフォーム内資産としても使用されることが一般的です。
BRC-20とは?
- プラットフォーム: ビットコインブロックチェーン
- 特徴:
- ビットコイン上でトークンを発行するという新しい概念で、2023年にOrdinals(オーディナルズ)プロトコルを基に誕生。
- トークン情報をビットコインの最小単位である「サトシ」に刻み込み、トークンの発行や転送情報を記録します。
- 現時点では実験的段階であり、イーサリアムのようなスマートコントラクト機能はなく、機能面では制約があります。
- 注目ポイント:
- ビットコインの巨大なユーザーベースと流動性を背景に、NFTや新しいタイプの資産管理ツールとして進化する可能性が高いと考えられています。
- 開発中の技術であり、将来的にトランザクション処理能力や拡張性の課題を克服できるかが注目されます。
トークン規格を理解する重要性
- 異なるブロックチェーン上で発行されたトークンを安全に取引・管理するためには、その規格の理解が不可欠です。
- クロスチェーンブリッジやDEX(分散型取引所)を利用する際にも、規格対応の有無で取引可否が変わることがあります。
- 将来的に、ERC-20やBRC-20に続く新しい規格(ERC-721、ERC-1155、TRC-20など)も活発に登場しており、それぞれの特性や利用方法を学ぶことで、Web3.0時代を安全かつ有利に活用できるスキルとなります。
暗号資産投資の始め方:初心者向けステップガイド
1. 情報収集:
- まずは、暗号資産(仮想通貨)の基本的な仕組みを理解することから始めましょう。ブロックチェーンとは何か、暗号資産の種類(ビットコイン、アルトコイン、ステーブルコインなど)、スマートコントラクトやDeFiといった関連技術についても学ぶと理解が深まります。
- 情報収集は信頼できる公式サイトや、CoinDesk・Cointelegraph・日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)など公的機関や実績あるニュースメディアから行いましょう。
- SNSやYouTubeも有効ですが、必ず複数の情報源で裏付けを取り、詐欺的な情報や誤報に惑わされない姿勢が重要です。
2. 取引所の選定:
- 国内であれば、金融庁登録済みの取引所を必ず選びましょう。代表例としては、Coincheck(コインチェック)、bitFlyer(ビットフライヤー)、GMOコイン、bitbank などがあります。
- 手数料(取引手数料、入出金手数料、スプレッド)を比較検討し、初心者に優しいUIやサポート体制の充実度も確認しましょう。
- 取扱通貨数もポイントです。興味のある通貨が対応しているかを確認してください。
- 海外取引所を利用する場合は、規制の緩さによるリスクも認識しておきましょう。
3. 口座開設:
- 取引所を決定したら、本人確認(KYC)の手続きを行います。免許証やマイナンバーカードをスマホアプリで撮影・提出するだけで簡単に登録可能です。
- 本人確認が完了したら、二段階認証(2FA)の設定を必ず行いましょう。Google AuthenticatorやSMS認証を用いることで、不正ログインのリスクを軽減できます。
- また、パスワードは使い回しを避け、複雑で推測されにくいものを設定してください。
4. 少額投資からスタート:
- 暗号資産は価格の変動が激しいため、初めは1,000円〜5,000円程度の少額からスタートすることをおすすめします。
- 「全額一点集中投資」ではなく、ビットコインやイーサリアム、ステーブルコイン、その他成長性のあるアルトコインなど、分散投資を心掛けましょう。
- 毎月一定額を積立投資する「ドルコスト平均法」を活用するとリスクを軽減しやすくなります。
5. 長期保有と資産管理:
- 短期トレードは難易度が高く失敗しやすいので、初心者は長期投資を前提に保有することを推奨します。
- 暗号資産はボラティリティ(価格変動)が高いため、一時的な下落に慌てず、3年~5年スパンで資産形成を目指しましょう。
- セキュリティ面では、取引所のホットウォレット(オンライン管理)だけでなく、自分自身でハードウェアウォレットを利用して資産をオフラインで保管する方法も学んでおくと安心です。
この5つのステップを意識して取り組むことで、初心者でも安全かつ着実に暗号資産投資をスタートさせることができます。
まとめ
暗号資産は、新しい技術であり、投資にはリスクが伴います。しかし、正しい知識と情報を持つことで、その可能性を最大限に活用することができます。本記事が、あなたの暗号資産投資の第一歩となることを願っています。